当サイトの記事は編集部が業界団体・公的機関の公式サイトなどの公開情報を調べて独自に執筆しています。記事内に講座・スクールへの案内を含みます。
物語を書くのが好きで、『小説家と脚本家、自分はどっちを目指せばいいんだろう』と迷っていませんか。
結論から言うと、小説家と脚本家の違いは「読者が文字を読んで想像するか、観客が役者の声と映像で受け取るか」です。
この違いが、書き方にも働き方にもそのまま表れます。
この記事では、同じ場面を小説と脚本で書き比べながら、両方を目指す時の進め方まで具体的に見ていきます。
小説家と脚本家の違いは「読む人」と「見る人」
小説は、文字だけで読者の頭の中に場面を作ります。脚本は、役者やスタッフが作品を作るための設計図です。最終的に受け取るのが「読者」か「観客」かで、書くべきことが変わります。
小説家が書いた文章は、そのまま読者の手に届きます。
景色も心の中も、全部を文字で伝えるのが小説家の仕事です。
一方、脚本家が書いた脚本は、観客がそのまま読むものではありません。
監督や演出家、役者、美術や照明のスタッフが読んで、映像や舞台に立ち上げるための土台なんです。
脚本は、場面の場所と時間を書く「柱」、動きや状況を書く「ト書き」、人物名とかぎかっこで書く「セリフ」でできています。
形式の基本は 脚本の書き方の基本|柱・ト書き・セリフのルール でくわしく紹介しています。
| 比べるところ | 小説家 | 脚本家 |
|---|---|---|
| 受け取る人 | 読者 | 観客(脚本を読むのは作り手) |
| 書くもの | 地の文と会話 | 柱・ト書き・セリフ |
| 心の中の描き方 | 地の文で直接書ける | 行動やセリフで見せる |
| 完成の形 | 本や雑誌、電子書籍 | 映画・ドラマ・アニメ・舞台・ラジオ |
| 一緒に作る人 | 主に編集者 | プロデューサー・監督・演出家・役者など |
| 原稿の量り方の例 | 作品ごとにさまざま | 200字詰めを1枚と数える「ペラ」が多い |
どちらが上ということはありません。
同じ「物語を作る仕事」でも、ゴールの形が違うと考えるとすっきりしますよ。
同じ場面を小説と脚本で書き比べると?
ここがこの記事でいちばん伝えたいところです。
違いを言葉で説明するより、同じ場面を両方で書いてみると一目で分かります。
例として、「地方の商店街で、店を継ぐか迷っている娘が、閉店後の店で父と向き合う場面」を書いてみますね。
小説で書くとこうなる
まずは小説の書き方です。
シャッターを半分下ろした店の中で、父は黙って帳簿をめくっていた。
継がない、と言うつもりで来たのに、喉の奥で言葉が止まる。
この店の匂いを、私は子どもの頃から知っている。それを手放すのが、自分でも思っていたより怖かった。
小説では、「言うつもりで来た」「怖かった」という娘の心の中を、地の文でそのまま書けます。
子どもの頃の記憶も、一文で差し込めるのが小説の強みです。
脚本で書くとこうなる
同じ場面を脚本にすると、こうなります。
○ 商店街・青果店・店内(夜)
半分下りたシャッター。父、帳簿をめくっている。
娘、入ってくる。何か言いかけて、やめる。
棚の果物に手を伸ばし、ひとつ持ち上げて匂いをかぐ。
父「……今日は売れ残りが多くてな」
娘「うん」
脚本では「怖かった」とは書けません。
その代わりに、言いかけてやめる動きや、果物の匂いをかぐ仕草で、迷いを観客に感じ取ってもらいます。
時間を飛ばす場面も書き比べてみる
もう一つ、時間が飛ぶ場面でも比べてみましょう。
娘が結局店を継ぎ、何年かたって店に立っている場面です。
あれから三年がたった。
朝の仕入れにもすっかり慣れ、常連の顔と好きな果物の組み合わせも覚えた。
小説なら「あれから三年」と一文書けば、読者はすぐについてきてくれます。
○ 商店街・青果店・店先(朝)
娘、段ボールを手際よく積み上げる。エプロンは色あせている。
常連の客「いつもの、ある?」
娘「取ってありますよ」
脚本では、新しい柱を立てて場面を作り、色あせたエプロンや手際のよさで「時間がたった」ことを見せます。
字幕で年数を出す方法もありますが、まずは場面の中で伝わるか試してみると、脚本らしい書き方が身につきますよ。
書き比べで分かる3つの違い
並べてみると、違いは大きく3つあります。
| 違いが出るところ | 小説 | 脚本 |
|---|---|---|
| 心の声 | 地の文で直接書ける | 行動・表情・間で見せる |
| 説明 | 背景や過去を文章で補える | セリフに混ぜるか、場面そのものを作る |
| 時間の飛ばし方 | 「三年後」と一文で飛べる | 柱を変えて新しい場面を立てる |
特に戸惑いやすいのが「説明」です。
小説を書いてきた人ほど、脚本でもセリフに説明を詰め込んでしまいがちなんです。
例えば、こんなセリフは要注意です。
「お父さん、この店はおじいちゃんの代から五十年続いてきた店で、私はそれを継ぐか迷ってるの」
人は普段、相手も知っていることをわざわざ口にしませんよね。
脚本では、店の古い看板を映したり、祖父の写真を壁に貼ったりと、場面の中に置いて伝えるほうが自然です。

地の文で書いていた心の声を、そのままト書きに書いてしまうことです。「娘は怖いと感じている」とト書きに書いても、役者はそれを動きで見せるしかありません。何をするか、何を言うかで表すのが脚本の書き方です。
働き方はどう違う?仕事の進め方と関わる人
書き方だけでなく、仕事の進め方も大きく違います。
『どっちも家で一人で書く仕事でしょ?』と思う方もいるかもしれません。
実は、一緒に作る人の数がまったく違うんです。
小説家の仕事の進め方
小説家は、基本的に一人で書き進めます。
書き上げた原稿について編集者と相談し、直しを重ねて本になる流れが一般的です。
文章そのものが完成品なので、言葉選びの最終判断は書き手が持つことが多いです。
脚本家の仕事の進め方
脚本家は、プロデューサーや監督との打ち合わせで、企画の方向・世界観・内容を詰めながら書き進めます。
脚本は撮影や稽古の前に何度も直しが入るのが普通で、「直すこと」も仕事の大きな部分です。
打ち合わせでは、例えばこんなやり取りがあります。
「この回は、主人公が島を出ると決めるところで終わらせたいですね」
「それなら、母親との場面を前に移して、最後は港の場面にしましょうか」
一人で書く小説と違い、ほかの人の意見を受けて組み立て直すことが、脚本家の毎日の仕事なんです。
原作のある作品を脚本にする「脚色」の仕事もあります。
小説や漫画を、決められた放送時間や上映時間の中に収まる形に組み立て直す作業です。
| 比べるところ | 小説家 | 脚本家 |
|---|---|---|
| 書き始めるきっかけ | 自分の企画や編集者からの依頼 | プロデューサーなどからの依頼や企画会議 |
| 直しの入り方 | 編集者との相談 | 打ち合わせのたびに直しが入る |
| 時間や長さの制約 | 作品ごとに比較的自由 | 放送時間・上映時間に合わせる |
| 完成までに関わる人 | 少人数 | 多くのスタッフと役者 |
| 仕事の来方 | 作品ごとに不安定になりやすい | 作品ごとに不安定になりやすい |
長さの感覚も違う
小説と脚本では、原稿の長さのとらえ方も違います。
脚本は、20字×20行の200字を1枚と数える「ペラ」で量ることが多いです。
例えばラジオドラマの公募では、50分の作品で50〜55枚と定めた回がありました。
つまり脚本家は「何分の作品か」から逆算して、場面の数やセリフの量を決めていくんです。
| 比べるところ | 小説 | 脚本 |
|---|---|---|
| 長さの決まり方 | 物語に合わせて決めやすい | 放送時間・上映時間から逆算する |
| 量り方の例 | 文字数やページ数 | 200字を1枚とするペラの枚数 |
| 削る時の考え方 | 文章を短くする | 場面ごと削ることもある |
公募の枚数の決まりは回によって変わるので、応募する時は最新の募集要項を確かめてくださいね。
どちらも作品ごとに仕事を受ける形が多いので、仕事の来方は不安定になりやすいと言われます。
ほかの仕事と組み合わせて書き続ける人がいるのは、どちらの道でも同じなんです。
脚本家の仕事は、映画・ドラマ・アニメ・舞台・ラジオでそれぞれ進め方が違います。アニメではシリーズ全体の流れを決める役割があったり、ゲームのシナリオは選択肢やキャラクターの会話の書き方が独特だったりします。
アニメの脚本については アニメの脚本家になるには?、ゲームの場合は ゲームシナリオライターと脚本家の違い で取り上げています。
小説家に向いている人、脚本家に向いている人
「自分はどっちに向いているのか」は、多くの人が気になるところですよね。
才能があるかないかではなく、書いていて楽しいのはどんな時かで考えてみてください。
小説家の書き方が合いやすい人
- 人物の心の中をじっくり言葉にするのが好き
- 景色や匂いを文章で描くのが楽しい
- 自分のペースで一人で書き進めたい
- 文章そのものの響きやリズムにこだわりたい
脚本家の書き方が合いやすい人
- 会話のやり取りを考えるのが好き
- 頭の中で場面が映像として浮かぶ
- 人と話し合いながら作品を作るのが楽しい
- 直しを入れられても前向きに書き直せる
両方に当てはまる人もいるはずです。
その場合は、どちらか一方に決めなくても大丈夫ですよ。
実際、小説と脚本の両方を書く書き手もいます。
迷った時の試し方として、同じ題材で両方を書いてみるのがおすすめです。
「書いていて時間を忘れたのはどっちだったか」が、いちばん正直な答えになります。
1週間で試せる書き比べの進め方
平日に少しずつ時間を取れる人なら、こんな割り振りで試せます。
| 曜日 | やること |
|---|---|
| 月曜 | 題材を1つ決める(例 離島の診療所に新しい医師が来る日) |
| 火曜 | 小説で原稿用紙3枚ほど書く |
| 水曜 | 同じ場面を脚本で3枚ほど書く |
| 木曜 | 両方を声に出して読み比べる |
| 金曜 | 書きやすかった点・難しかった点をメモする |
| 週末 | 気に入ったほうを書き足してみる |
1回で決めなくても大丈夫です。
題材を変えて何度か繰り返すうちに、自分の手がどちらに向いているか見えてきます。
小説家から脚本家へ、両方を目指す進め方
ここでは、小説を書いてきた人が脚本にも挑戦する時の進め方を紹介します。
『小説家から脚本家になるのって、遠回りじゃない?』と心配な方もいるかもしれません。
実は、小説で鍛えた「物語を最後まで書き切る力」は、脚本でもそのまま生きるんです。
切り替えが必要なのは、主に書き方の部分です。
- 好きなドラマや映画を1本見て、場面が変わるたびに柱をメモする
- 自分の小説の中から、会話の多い場面を1つ選ぶ
- その場面を、柱・ト書き・セリフの書式に書き直す
- ト書きから心の声を消し、行動と表情に置き換える
- 声に出して読み、説明っぽいセリフを削る
書式で戸惑いやすいところ
小説から脚本に移った人がつまずきやすいのは、書式の細かな部分です。
| 戸惑いやすいところ | 小説での書き方 | 脚本での書き方 |
|---|---|---|
| 場面の始まり | 景色の描写から入る | 柱に場所と時間を書く |
| 人物の登場 | 名前と外見を描写する | ト書きで短く登場させる |
| 会話 | かぎかっこと地の文を交互に | 人物名のあとにセリフを書く |
| 回想 | 地の文で過去に戻る | 回想の場面として柱を立てる |
| 場面の終わり | 余韻のある一文で閉じる | 次の柱に移る |
最初は書式に気を取られて、物語が進まなくなることもありますよね。
そんな時は、まず中身を小説のつもりで書き、あとから書式に直す順番でもかまいません。
この手順を何度か繰り返すと、「見せて伝える」感覚が少しずつつかめてきます。
週に1場面ずつでも、3か月続ければかなりの量になりますよ。
学生のうちからできること
「小説家と脚本家の両方になりたい」という学生の方もいますよね。
学生のうちは、とにかく書いた量と読んだ量がそのまま力になります。
- 小説と脚本を、それぞれ短いものから書き切る
- 好きな作品を見たら、場面の数と順番をメモする
- 書いたものを友人や家族に読んでもらう
- 演劇部や放送部など、書いたものが声になる場に関わる
進学先を考える時は、文芸や映像を学べる学科も選択肢になります。
ただし、学科によっては募集を停止しているところもあるので、最新の公式情報で確かめておきましょう。
脚本から小説に挑戦する場合
逆に、脚本を書いてきた人が小説に挑戦する時は、心の中を言葉にする練習から始めるのが近道です。
脚本では書かなかった「その時どう感じたか」を、あえて地の文で書き足してみてください。
公募に出す時に気をつけたいこと
小説と脚本の両方を書く人は、公募の条件にも目を向けておきましょう。
シナリオのコンクールでは、未発表でオリジナルの作品を条件にするものが多く見られます。
劇場用映画の脚本の公募には、原作の脚色を対象外とするものもあります。
自分の小説をもとにした脚本を応募したい時は、その作品が「未発表」「オリジナル」に当てはまるか、応募前に最新の募集要項で確かめておくと安心です。
| 確かめたい条件 | 見るところ |
|---|---|
| 未発表であること | どこまでの公開を「発表」とするか |
| オリジナルであること | 原作ものや脚色が対象になるか |
| 1人1作品か | 同時に複数出せるか |
| 生成AIの扱い | AIを使った脚本が対象外になっていないか |
生成AIを使って書いた脚本は対象外とするコンクールもあるので、ここも見落とさないようにしたいところです。
脚本家になるまでの道のり全体は 脚本家になるには?未経験からデビューまでの道のり にまとめています。
一人で続けるのが難しくなったら
小説の書き方が身についている人ほど、脚本の直しどころが自分では見えにくいことがあります。
「説明しすぎていないか」「場面が多すぎないか」は、脚本を読み慣れた人に見てもらうとすぐに分かるんです。
独学で行き詰まったら、プロの添削を受けられるシナリオ講座を比べてみると、次の一歩が見えやすくなりますよ。
シナリオ講座の案内
脚本を基礎から学ぶなら、プロの添削を受けられる講座を見てみませんか
日本シナリオ作家協会のシナリオ講座は、基礎科と研修科の2段階。教室クラスとリモートクラスがあり、映画やテレビドラマの現場で活躍する現役脚本家が作品指導をすると案内しています。
無料シナリオ講座の詳細を見る受講料・開講日程・募集状況は公式サイトでご確認ください。

知恵袋でよくある相談に答えます
小説家と脚本家については、知恵袋にも多くの相談があります。
よく読まれていた相談を要約して、お答えしますね。
脚本家って小説家と何が違う?原作を直す時は何をする?
とても多く読まれていたのが、この相談です。
違いは、この記事の最初で見た「読む人か、見る人か」に集まります。
原作を脚本にする時は、小説の地の文で書かれていた心の中や説明を、行動・セリフ・場面に置き換える作業をします。
さらに、放送時間や上映時間に合わせて、場面を選んだり順番を組み替えたりすることもあります。
小説をそのまま書式だけ変えるのではなく、映像や舞台で伝わる形に組み立て直す仕事なんです。
例えば、小説で十ページかけて描かれた主人公の迷いを、脚本では一つの場面と短いセリフにまとめることもあります。
どこを残してどこを削るかを決めるのも、脚本家の大事な役目です。
小説家に向いている人と脚本家に向いている人の違いは?
向き不向きの相談もよく読まれていました。
結論から言うと、「心の中を言葉にするのが好きか」「会話と動きで見せるのが好きか」が一つの目安になります。
ただ、これは書いてみないと分からない部分も大きいです。
先ほど紹介したように、同じ題材で両方を書き比べてみるのがいちばん確かな方法ですよ。
小説を書きながら脚本の講座に通う人はいる?
「小説の仕事をしながら、脚本の勉強もしたい」という相談もありました。
脚本の講座には、通学だけでなくオンラインで受けられるものもあり、働きながら学ぶ人も少なくありません。
小説を書いてきた人にとっては、書式やト書きの書き方を基礎から教わる場として役立ちます。
講座を選ぶ時は、添削の回数や、講師が現役で書いているかどうかを見ておくと、自分に合うところを選びやすくなります。
受講期間や、修了後に続けて学べるコースがあるかもあわせて確かめておくと安心です。
小説家と脚本家は、どちらかを選ばないといけない仕事ではありません。書き方の違いを知って、両方を試しながら自分に合う形を見つけていけば大丈夫です。

よくある質問
小説家と脚本家、どちらが先になりやすいですか?
どちらが先になりやすいとは一概に言えません。小説の新人賞とシナリオのコンクールでは求められるものが違うので、自分が書いていて続けやすいほうから挑戦するのがおすすめです。
小説家から脚本家になることはできますか?
できます。脚本家になるための必須の資格はなく、コンクールへの応募や講座での学びを通して、脚本の書き方を身につけていくのが基本の道筋です。
脚本家が小説を書くこともありますか?
あります。脚本と小説の両方を手がける書き手もいます。脚本で鍛えた会話の力は、小説の会話文にも生かせます。
小説の書き方の癖は脚本で直すべきですか?
心の声をト書きに書く癖や、説明の多いセリフは直したほうが読みやすくなります。ただ、物語を最後まで書き切る力や人物の作り方は、そのまま脚本でも役立ちます。
両方を同時に勉強しても大丈夫ですか?
大丈夫です。ただし最初のうちは、週ごとに「今週は脚本」「来週は小説」と分けると、書き方の切り替えがしやすくなります。
まとめ
- 小説家と脚本家の違いは、受け取るのが読者か観客か
- 脚本では心の声を書かず、行動・セリフ・間で見せる
- 小説家は一人で、脚本家は多くの人と打ち合わせながら書く
- 向き不向きは、同じ題材で両方を書き比べると見えてくる
- 小説家から脚本家を目指す時は、自分の小説の1場面を脚本に書き直す練習から





コメント