脚本家と演出家の違い|舞台・テレビでの役割分担

脚本家と演出家の違いを表すアイキャッチ。稽古場の机に置かれた台本

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舞台のパンフレットやドラマのクレジットを見て、『脚本と演出って、何が違うんだろう』と思ったことはありませんか。

結論から言うと、脚本家と演出家の違いは「物語を文字で書く人」と「その文字を舞台や画面に立ち上げる人」です。

この記事では、舞台とテレビでの分担の違いと、台本が現場に渡ったあと「誰が何を変えてよいか」の目安まで、具体例で見ていきます。

目次

脚本家と演出家の違いは「書く人」と「立ち上げる人」

先に結論

脚本家はセリフとト書きで物語を書きます。演出家はその脚本をもとに、役者の動き・間・照明や音の入り方まで決めて、観客が見る形に仕上げます。

脚本家が書くのは、場面の場所と時間を示す「柱」、人物の動きや状況を書く「ト書き」、そして「セリフ」です。

いわば、物語の設計図を作る仕事なんです。

一方の演出家は、その設計図を読み込んで「どう見せるか」を決めます。

同じセリフでも、ささやくのか叫ぶのか、立ったまま言うのか背中を向けて言うのかで、受け取る印象はまったく変わりますよね。

例えば、脚本にこう書いてあったとします。

「○ 駅前の商店街(夕)
シャッターの下りた店の前で、娘が父を待っている。」

脚本家が決めているのは「夕方の商店街で娘が父を待つ」という出来事です。

何秒待たせるか、どの角度から見せるか、夕日の色をどう出すかは、演出家が決める部分になります。

項目脚本家演出家
主な仕事物語・場面・セリフを書く脚本を舞台や映像として見せる形にする
手を動かす場所机・打ち合わせの場稽古場・撮影現場・編集の場
決めること誰が何をして何を言うか動き・間・テンポ・見せ方
一緒に動く人プロデューサー・演出家・監督役者・美術・照明・音響などのスタッフ
仕上がりの形台本(脚本)上演・放送される作品

ただ、この線引きはいつもきれいに分かれるわけではありません。

稽古や撮影の途中で「このセリフは言いにくい」となれば、脚本家と演出家が相談して書き直すことはよくあります。

脚本家という仕事の全体像は 脚本家とは?仕事内容と役割 でくわしく紹介しています。

舞台とテレビドラマで、演出家の立ち位置はどう変わる?

『演出家って、舞台の人のことじゃないの?』と思う方も多いはずです。

実は、テレビドラマの現場でも「演出」という言葉はよく使われます。

舞台の演出家

舞台では、演出家が稽古場の中心に立ちます。

役者と一緒に何度も場面を繰り返し、立ち位置や間を少しずつ決めていくのが基本の流れです。

本番が始まってからも、客席の反応を見て細かな調整が続くことがあります。

舞台では脚本家と演出家を同じ人が兼ねる「作・演出」の形も少なくありません。

劇作家としての舞台の脚本家については 舞台・演劇の脚本家|劇作家の仕事となり方 にまとめています。

テレビドラマの演出

テレビドラマでは、各話の撮影を指揮する人を「演出」と呼ぶ現場が多いです。

連続ドラマでは、話数ごとに演出の担当が変わることもあります。

脚本家は、プロデューサーとの打ち合わせを重ねて台本を仕上げ、撮影が始まる前に渡すのが一般的な流れです。

そのため、撮影現場に脚本家が毎日いるとは限りません。

比べるところ舞台テレビドラマ
演出家が主に動く場所稽古場と劇場撮影現場と編集
脚本家と現場の距離稽古に立ち会うことがある台本を渡したあとは離れることが多い
兼ねる形作・演出の兼任がよくある脚本と演出は別の人が多い
直しの入り方稽古の中で場面ごとに調整撮影前の打ち合わせで直すことが多い

もちろん、これは目安です。

作品や制作会社によって進め方は違うので、「そういう傾向がある」くらいで受け止めておいてくださいね。

テレビドラマができるまでの流れは ドラマの脚本家の仕事 で順番に見ています。

台本が渡ったあと「誰が何を変えてよいか」の目安

ここが、ほかの解説ではあまり語られないところです。

台本は渡したら終わりではありません。

稽古場や撮影現場では、毎日のように小さな変更が起きています。

『じゃあ、演出家は脚本を自由に書き換えていいの?』という疑問がわきますよね。

答えは「変える中身によって、相談の重さが変わる」です。

この表の見方

作品や契約によって取り決めは変わります。ここでは、現場でよく見られる考え方を目安として並べています。

変える中身主に決める人脚本家への相談
立ち位置・動き・間演出家基本的にいらない
照明・音・美術の見せ方演出家とスタッフ基本的にいらない
言い回しの小さな調整(語尾など)演出家と役者現場によっては事後の共有で済む
セリフの削除・追加脚本家と演出家相談するのが一般的
場面の順番の入れ替え脚本家と演出家相談するのが一般的
結末・人物の行動の意味脚本家(プロデューサーも含む)脚本家が書き直す

例えば、稽古でこんな会話が起きたとします。

「この長ゼリフ、半分にできませんか。動きで見せたいんです」

「分かりました。前半の説明を削って、最後のひと言だけ残しますね」

このように、セリフの量や中身にかかわる変更は、演出家から脚本家へ相談が入るのが自然な流れです。

逆に「どこに立つか」「何秒黙るか」は演出家の仕事なので、脚本に細かく書き込みすぎると、かえって現場の手を縛ることもあります。

台本が現場に渡ったあと、変える中身ごとに誰が決めるかを示した図解
よくある失敗

書き始めたばかりの人ほど、ト書きに「3秒黙る」「右手で髪をかき上げる」まで書き込みがちです。動きの細部は演出家と役者に任せる部分なので、ト書きは「何が起きたか」を短く書くのが基本です。

現場で直しやすい脚本の書き方

演出家から相談が来た時、すぐに直せる脚本とそうでない脚本があります。

違いが出るのは、場面ごとの「狙い」が自分の中ではっきりしているかどうかです。

例えば「この場面は、娘が父を許していないと観客に伝える場面」と言えれば、セリフを半分にしても狙いは守れますよね。

逆に狙いがあいまいだと、削るたびに物語の芯までぶれてしまうんです。

渡す前に見直したいこと
  • 各場面の狙いを一行で言えるか確かめる
  • ト書きに動きの細部を書き込みすぎていないか見る
  • 削っても話が通じるセリフに印をつけておく
  • 人物の行動の理由が前の場面に書かれているか確かめる

脚本家と演出家を兼ねる人がいるのはなぜ?

舞台では、一人が脚本と演出の両方を担う形がよくあります。

『兼ねたほうが得なのかな』と考える方もいるかもしれません。

兼ねると、書いた時の狙いをそのまま稽古場で形にできます。

その一方で、書いたものを客観的に見直す目が届きにくくなる面もあるんです。

兼ねる良さ
  • 書いた狙いを稽古場で直接伝えられる
  • 直しの判断が早い
  • 場面のつながりを一人で見通せる
兼ねる難しさ
  • 自分の脚本の弱いところに気づきにくい
  • 書く時間と稽古の時間がぶつかる
  • 相談相手が少なくなる

例えば小さな劇団の公演なら、こんな流れになることがあります。

稽古初日に「作・演出」の担当者が台本を配り、読み合わせのあとで役者からこう言われる場面です。

「この場面、ここで泣くのは早い気がします」

「確かに。じゃあ泣くのは次の場面に回して、ここは笑ってごまかす形に書き直しますね」

書いた本人がその場で直せるので、稽古の流れが止まりにくいのが兼任の強みです。

映画でも、脚本家と監督を同じ人が兼ねる例があります。

映画の場合の分担は 脚本家と映画監督の違い でくわしく紹介しています。

どちらを選ぶにしても、まずは「書く力」が土台になります。

演出家を目指す人にとっても、脚本を読み解く力は欠かせないからです。

知恵袋でよくある相談に答えます

脚本家と演出家については、知恵袋にもいろいろな相談が寄せられています。

閲覧の多かった相談を、内容を要約してお答えしますね。

舞台の脚本家や演出家の収入はどのくらい?

いちばん多く読まれていたのが、舞台の作り手の収入についての相談でした。

正直なところ、金額は作品の規模や契約によって大きく変わるため、一概には言えません。

言えるのは、どちらも作品ごとに仕事を受ける形が多く、仕事の来方が不安定になりやすいことです。

そのため、ほかの仕事と組み合わせながら経験を積む人もいます。

「この人の主演で書いて」と頼まれるのは普通?

「脚本が先か、主演が先か」という相談もありました。

結論から言うと、どちらの順番もあります。

出演者が先に決まっていて、その人に合わせて脚本を書く「当て書き」は、舞台でもドラマでもよく行われるやり方です。

脚本家にとっては、役者の声や雰囲気を思い浮かべながら書けるので、人物が立ちやすくなる面もあります。

脚本家・演出家・監督で一番偉いのは誰?

「誰が一番上なのか」という素朴な疑問も読まれていました。

これは上下ではなく、担当の違いと考えるのが近いです。

脚本家は物語、演出家や監督は見せ方、プロデューサーは企画やお金・人の手配と、それぞれ受け持ちが違います。

最終的な判断を誰がするかは作品ごとに決まるので、「この立場が一番」とは言えないんです。

相談を読む時に押さえたいこと
  • 収入や待遇は作品と契約で大きく変わる
  • 主演が先に決まる当て書きはよくある
  • 脚本家・演出家・監督は上下ではなく受け持ちの違い

脚本家・演出家を目指すなら、まず何をする?

『どっちに進むか、まだ決めきれない』という方もいますよね。

それでも大丈夫です。

最初の一歩はどちらも共通していて、「脚本を読む・書く・人に見せる」から始まります。

最初の1か月でやること
  1. 好きな舞台やドラマを1本選び、場面ごとに何が起きたかをノートに書き出す
  2. 柱・ト書き・セリフの書式で、10枚ほどの短い場面を書いてみる
  3. 書いた場面を声に出して読み、言いにくいセリフに印をつける
  4. 誰かに読んでもらい、どこで退屈したかを聞く

自分はどちらに向いている?

迷っている時は、作品づくりのどこが一番楽しいかで考えてみてください。

楽しいと感じること向いている方向の目安
一人で物語やセリフを考える時間脚本家
人と話し合いながら場面を形にする時間演出家
書いたものが人の声になる瞬間両方を試す価値あり
場面の順番やつながりを考えること脚本家
役者の動きや光の当て方を考えること演出家

もちろん、これはきっかけ探しの目安です。

両方を経験してから決める人も多いので、今の時点で一つに絞らなくても大丈夫ですよ。

演出に興味がある人は、書いた場面を友人と読み合わせして「どう動くか」を試してみるのもおすすめです。

自分の脚本が人の声になった時、ト書きに書きすぎた部分と足りない部分がよく分かります。

ただ、一人で書き続けていると、どこを直せばいいのか分からなくなる時期が来ます。

独学で行き詰まったら、現役の脚本家に添削してもらえる講座を比べてみると、次の一歩が見えやすくなりますよ。

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よくある質問

脚本家と演出家、どちらが先に作品に関わりますか?

多くの場合、脚本家が先に関わります。企画の段階からプロデューサーと打ち合わせをして台本を仕上げ、それをもとに演出家が稽古や撮影を進めるのが一般的な順番です。

演出家になるのに脚本を書く力は必要ですか?

脚本を書く経験は、演出の仕事でも役に立ちます。どこで場面が動くのか、なぜこのセリフがあるのかを読み取る力は、書いた経験があるほど身につきやすいからです。

演出家が脚本を勝手に書き換えることはありますか?

動きや間は演出家が決めますが、セリフの削除や結末にかかわる変更は、脚本家と相談するのが一般的です。取り決めは作品や契約で違うため、事前の打ち合わせで確かめておくと安心です。

演出家と脚本家、学び始めるならどちらが先がいいですか?

迷っているなら、脚本を書くことから始めるのがおすすめです。紙とペンがあれば一人でも始められますし、書いた経験はあとで演出を学ぶ時にもそのまま役立ちます。

脚本家になるのに資格はいりますか?

脚本家になるための必須の資格はありません。コンクールへの応募や講座での学びを通して、書いた脚本で力を示していくのが基本の道筋です。

まとめ

この記事の要点
  • 脚本家は物語を文字で書き、演出家はそれを舞台や画面に立ち上げる
  • 舞台は稽古場で、テレビドラマは撮影現場で演出家が中心になる
  • 動きや間は演出家、セリフや結末の変更は脚本家と相談が目安
  • 舞台では脚本と演出を一人で兼ねる形もよくある
  • どちらを目指すにも、脚本を読む・書く・見せるが最初の一歩
脚本家ガイド

脚本家ガイド 編集部

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