当サイトの記事は編集部が業界団体・公的機関の公式サイトなどの公開情報を調べて独自に執筆しています。記事内に講座・スクールへの案内を含みます。
映画のエンドロールで「脚本」の名前を見て、どんな人がどうやって書いているのか気になったことはありませんか。
結論から言うと、映画の脚本家は「2時間前後の物語を1本の設計図にまとめる人」です。ドラマと同じ脚本でも、尺の使い方や見せ場の置き方がかなり違います。
この記事では、映画脚本ならではの書き方と、監督やプロデューサーとの関わり方を、手を動かせるところまで具体的にお話しします。
映画の脚本家はどんな仕事をしているの?
映画の脚本家は、企画の段階から打ち合わせに加わり、物語の骨組みを作って脚本に仕上げる仕事です。書いて終わりではなく、直しを重ねながら撮影できる形に整えていきます。
脚本は、セリフと「ト書き」でできています。ト書きは、場面の状況や人物の動きを書いた部分のことです。
映画の脚本家は、このセリフとト書きで、観客が2時間近く席を立たずに見られる流れを作ります。
『脚本家って、一人で机に向かって好きな話を書く人じゃないの?』と思う方も多いはずです。実は、映画の脚本はプロデューサーや監督との打ち合わせで方向を決めながら進むことがほとんどなんです。
原作のある小説や漫画を映画用に書き直す「脚色」の仕事もあります。オリジナルの物語を書く場合と、原作をまとめ直す場合では、求められる力が少し違います。
映画の脚本ができるまでの大まかな流れ
- 企画の打ち合わせで、テーマや世界観、狙う観客を決める
- あらすじ(プロット)を書いて、物語の筋を確かめる
- 場面の並びを決めるハコ書きで、全体の配分を見る
- 初稿を書き、打ち合わせで出た意見をもとに直す
- 第2稿、第3稿と直しを重ね、撮影に使う決定稿にする
直しの回数は作品によってまちまちです。打ち合わせで「この人物の動機が弱い」「中盤が長い」といった意見が出て、それに応えて書き直していきます。
プロットやハコ書きの作り方はプロット・ハコ書きの書き方で詳しく紹介しています。
オリジナルと脚色では何が違う?
オリジナル脚本は、物語の種から自分で育てます。何を描くかを決める自由がある分、最初の企画の強さがそのまま問われます。
脚色は、原作の魅力を2時間に収める仕事です。長い原作なら、どの人物と出来事を残し、どこを思い切って削るかの判断が中心になります。
- 題材や結末を自分で決められる
- 企画そのものの面白さが問われる
- 一から世界を作る下調べが必要
- 原作の筋や人物を土台にできる
- 何を削り何を残すかの判断が問われる
- 原作の魅力を損なわない配慮が必要
「映画の脚本家」と名乗る人の働き方
映画の脚本だけを専門に書く人もいれば、テレビドラマやアニメと掛け持ちする人もいます。監督が自分で脚本を書く作品もあります。
脚本家・シナリオライターは、厚生労働省の職業分類では「著述家」に含まれます。会社員として雇われるより、作品ごとに依頼を受けて書く働き方が多い仕事です。
| 立場 | 主な書き方 | 関わる場面 |
|---|---|---|
| 映画を専門に書く脚本家 | オリジナル・脚色の両方 | 企画段階から決定稿まで |
| ドラマ・アニメと掛け持ち | 依頼に合わせて書き分ける | 作品ごとに関わり方が変わる |
| 監督が自分で書く | 撮りたい画から逆算して書く | 脚本から撮影・編集まで一貫 |
映画とドラマの脚本はここが違う(尺・場面数・セリフ・見せ場)
映画は「1回で最後まで見てもらう物語」、連続ドラマは「次回も見たくなる物語」です。この前提の違いが、尺・場面数・セリフ・見せ場の置き方にそのまま表れます。
同じ脚本家でも、映画とドラマでは頭の使い方が変わります。違いを4つの観点で並べてみました。
| 観点 | 映画の脚本 | 連続テレビドラマの脚本 |
|---|---|---|
| 尺 | 2時間前後の1本で完結するのが目安 | 1話45分前後などを何話も重ねる |
| 場面数 | 1本の中で場面を絞り、流れを途切れさせない | 毎話の中で場面を細かく切り替えやすい |
| セリフ量 | 画で見せる部分が多く、セリフは控えめになりやすい | 家庭で見る前提で、セリフで状況を伝える場面が多め |
| 見せ場 | クライマックスに向けて1本の山を作る | 各話の終わりに「引き」を置き、山が何度も来る |
| 観客の状態 | 暗い劇場で集中して見る | 家事の合間などに見ることもある |

尺の違いは「配分」の違い
映画は1本で物語を終わらせます。だから、始まりから結末までの配分を最初に決めておくことがとても大事なんです。
例えば2時間の映画なら、最初の20〜30分で主人公と問題を見せ、最後の20〜30分で決着をつける、という配分がよく使われる目安です。
ドラマは何話もかけて人物を育てられます。映画は限られた時間で、観客に人物を好きになってもらう必要があります。
セリフで説明しすぎないのが映画らしさ
映画の画面は大きく、俳優の表情や小道具がよく見えます。そのため、気持ちをセリフで言わせなくても伝わる場面が多くあります。
例えば「父の形見の腕時計を、主人公が黙って外して机に置く」というト書き1行で、言葉にしない決意を見せられます。
『映画の脚本って、セリフが少ないほうがいいの?』と迷う方もいますよね。少なければいいわけではありません。ただ、「この気持ちは画で伝わるかな」と一度考えてからセリフを書くと、映画らしい脚本に近づきます。
場面数は「絞る」ほうが映画らしくなる
映画では、場面をたくさん切り替えるより、ひとつの場面をじっくり見せるほうが効果的なことがあります。
例えば、家族が言い争う場面を、居間・台所・玄関と細かく分けずに、食卓のひと続きの場面で書いてみる。逃げ場のない空気が、観客にもそのまま伝わります。
場面が増えると、撮影の手間も増えます。「この場面は、前の場面とまとめられないかな」と考える癖をつけておくと、打ち合わせでも話がスムーズです。
見せ場は「最後の一番大きな山」から逆算する
連続ドラマは、毎話の終わりに「続きが気になる」引きを置きます。映画にはその区切りがありません。
だからこそ、映画は最後の一番大きな山を先に決め、そこへ向かって小さな山を積み上げる書き方が向いています。
- 最後の山で、主人公は何を選ぶのか
- その選択が一番重くなるのは、どんな状況か
- 中盤の山は、最後の山の予告になっているか
- 見せ場の前に、観客が息をつける静かな場面があるか
ドラマの書き方を詳しく知りたい方は、ドラマの脚本家の仕事も合わせて読むと違いがよりはっきりします。
映画脚本ならではの書き方のコツ
映画脚本は「1本の太い山」を作れるかが勝負です。主人公が何を求め、何に阻まれ、最後にどう変わるかを最初に一文で言える状態にしてから書き始めると、2時間がぶれにくくなります。
書き始める前に一文で言えるようにする
書き始める前に、物語を一文で言ってみてください。
「地方の商店街で古い写真館を継いだ若者が、閉店を決めた父と最後の1年を過ごし、店を続けるかを自分で決める話」。こんなふうに、主人公と目的と結末の方向が入っていればまず十分です。
この一文が言えないまま書き始めると、途中で話が横道にそれやすくなります。
日本の脚本の基本書式
日本の脚本は、「柱」「ト書き」「セリフ」の3つで書くのが一般的です。柱には場面の場所と時間を書きます。
○ 駅前の商店街(夕)
シャッターの半分下りた写真館。店主が看板の電球を外している。
店主「もう、つけなくていいだろう」
原稿は200字詰め(20字×20行)を1枚と数える「ペラ」で量ることが多いです。書式の細かいルールは脚本の書き方の基本にまとめています。
映画脚本でよく使う組み立て
映画では、三幕構成と呼ばれる組み立てがよく使われます。始まり・中盤・結末の3つに分け、中盤で主人公を一番苦しい場所まで追い込む形です。
- 冒頭の数場面で、主人公が何に困っているかが分かる
- 中盤に、主人公が引き返せなくなる出来事がある
- 一番苦しい場面のあとに、主人公が自分で選ぶ場面がある
- 最後の場面で、冒頭と比べて主人公の何かが変わっている
- 説明のためだけのセリフが続く場面がない
組み立てをもっと深く知りたい方は脚本の構成の基本が参考になります。
映画らしい「画」をト書きに書く
映画の脚本では、ト書きの書き方で画面の印象が大きく変わります。とはいえ、カメラの位置や撮り方を細かく指定するのは監督の仕事です。
脚本家が書くのは「観客に何を見せたいか」です。「雨の中、傘を差さずに歩く」「食卓の椅子がひとつ空いている」のように、見えるものを短く書いておきましょう。
ト書きに「彼女は寂しさを感じている」と心の中を書いてしまうことです。カメラには心の中は映りません。寂しさが伝わる動きや小道具に置き換えてみてください。
監督やプロデューサーとはどう関わる?
プロデューサーは企画とお金・人の段取り、監督は撮影と画づくり、脚本家は物語の設計を受け持つのが基本の分担です。ただ、実際は重なり合いながら一緒に作っていきます。
映画の脚本家は、まずプロデューサーから声をかけられることが多い仕事です。そこに監督が加わり、3者で話し合いながら脚本を固めていきます。
| 場面 | 脚本家がすること | 相手がすること |
|---|---|---|
| 企画の打ち合わせ | 物語の案を出し、方向をすり合わせる | プロデューサーが狙いや条件を伝える |
| 初稿の読み合わせ | 意見を聞き、直す方針を決める | 監督が撮りたい場面を伝える |
| 直し | 筋を守りながら書き直す | 予算や撮影の都合を伝える |
| 撮影前後 | 必要に応じて細かな直しに応じる | 監督が現場で判断する |
『せっかく書いたのに、どうして変えられるの?』と感じることもあるかもしれません。映画は大勢で作るものなので、撮影場所や予算に合わせて脚本が変わるのはよくあることなんです。
例えば「雪の場面だったのが、撮影の時期の都合で雨の場面に変わる」ということもあります。そんな時は、場面の役割を守ったまま書き直せるかが脚本家の腕の見せどころです。
監督との違いや、監督が脚本を兼ねる理由は脚本家と映画監督の違いで詳しく比べています。
打ち合わせで役立つ準備
- 物語を一文で言ったもの
- 主な登場人物の一覧と、それぞれが求めているもの
- 場面の並びを書いたメモ(ハコ書き)
- 迷っているところを2〜3個に絞ったメモ
意見を言われた時は、その場で全部受け入れなくても大丈夫です。「この場面は、主人公の決意を見せるために入れています」と、場面の役割を説明できると話が前に進みやすくなります。
映画の脚本家についてよくある相談
映画の脚本についての相談は「脚本家は取材をするの?」「映画の脚本が物足りなく感じるのはなぜ?」の2つが特に多く見られます。どちらも、映画が大勢で作られることを知ると見え方が変わります。
相談1:映画の脚本家を名乗る人に、街で生活のことを聞かれた
『街で声をかけられて、普段の暮らしを聞かれた。本当に脚本家なの?』という相談です。
脚本家が物語のために、人の暮らしや仕事について話を聞く「取材」をすること自体は珍しくありません。ただし、知らない人に急に個人的なことを聞かれたら、答えなくて大丈夫です。
取材を受けるかどうか迷った時は、所属や連絡先を確かめ、その場で個人情報を渡さないようにしておきましょう。
脚本家を目指す側から見ると、取材は大事な下調べです。知り合いの職場の話を聞く、図書館で資料を読むなど、身近なところから始めてみてください。
相談2:映画の脚本だけ、なぜか物足りなく感じる
『映像は綺麗なのに、話に入り込めない映画がある。脚本の問題?』という相談も見られます。
結論から言うと、脚本だけが原因とは限りません。映画は撮影や編集の段階で場面が削られたり、順番が入れ替わったりすることがあります。
また、原作のある映画では、長い物語を2時間に収めるために、人物や出来事を大きく絞ることになります。そこで物足りなさを感じる人もいるわけです。
物足りないと感じた映画こそ、「自分ならどの場面を削り、どこを足すか」をメモしてみてください。脚本を学ぶ練習としてとても役に立ちます。
相談3:話の大元は、監督と脚本家のどちらが考えるの?
『最初の「こういう話を作りたい」は誰が決めているの?』という相談もあります。
これは作品によって違います。プロデューサーが企画を立てて脚本家に頼む場合、監督が撮りたい題材を持ち込む場合、脚本家が自分の企画を売り込む場合などさまざまです。
映画脚本を書いてみたい人の最初の一歩
映画の脚本家に近づく一歩目は、短い映画脚本を1本書き上げることです。いきなり2時間の脚本に挑むより、30分程度の短編から始めると最後まで書き切りやすくなります。
『映画の脚本家に憧れるけど、何から手をつければいいか分からない』という方も多いはずです。まずは小さく書いて、読んでもらうところまで進めてみましょう。
- 好きな映画を1本選び、場面ごとに「何が起きたか」を1行でメモする
- その映画を始まり・中盤・結末の3つに分けてみる
- 物語を一文で言えるオリジナルの企画を3つ考える
- 一番書きたい企画で、短編の脚本を1本書き上げる
- 書いた脚本を人に読んでもらい、分かりにくかった場面を聞く
映画を分析する時は、場面ごとのメモにとどめておきましょう。書き写す練習をする場合も、自分の練習用にして公開しないようにしてください。
書き上げたら「誰に読んでもらうか」を決める
脚本は人に読まれて初めて、伝わるかどうかが分かります。友人や家族に読んでもらうのも一つの方法です。
ただ、脚本の書式や構成まで見てもらうには、脚本を学んだ人の目が必要になります。実際に書いた人の多くが、ここで行き詰まりを感じるんです。
| 読んでもらう相手 | 分かること | 向いている段階 |
|---|---|---|
| 友人・家族 | 話が伝わるか、面白いと感じるか | 書き始めたばかりの頃 |
| 脚本を学ぶ仲間 | 構成やセリフの気になる点 | 何本か書き上げた頃 |
| 講座の講師 | 書式・構成・人物の弱いところ | コンクールに出したい頃 |
独学で書き続けるのも立派な道です。ただ、書いた脚本をプロに添削してもらうと、自分では気づけなかった癖が一気に見えることがあります。
行き詰まりを感じたら、添削を受けられるシナリオ講座を比べてみると、次の一歩が見えやすくなります。
シナリオ講座の案内
脚本を基礎から学ぶなら、プロの添削を受けられる講座を見てみませんか
日本シナリオ作家協会のシナリオ講座は、基礎科と研修科の2段階。教室クラスとリモートクラスがあり、映画やテレビドラマの現場で活躍する現役脚本家が作品指導をすると案内しています。
無料シナリオ講座の詳細を見る受講料・開講日程・募集状況は公式サイトでご確認ください。
映画の脚本家に向いている人
『自分は映画の脚本家に向いているのかな』と気になる方もいますよね。
才能があるかどうかより、次のような習慣があるかのほうが、続けるうえでは大きく効いてきます。
| 習慣 | 映画脚本で役立つ場面 |
|---|---|
| 人の会話や仕草をよく見ている | 説明しすぎない自然なセリフが書ける |
| 映画を見たあとに場面を思い返す | 配分や見せ場の置き方が身につく |
| 意見をもらっても書き直せる | 打ち合わせと直しを乗り切れる |
| 締切を決めて書き上げられる | 短編を何本も完成させられる |
今の時点で全部そろっていなくても大丈夫です。書き上げる本数が増えるほど、自然と身についていくものばかりです。
コンクールという入口もある
映画の脚本家を目指す人の入口として、シナリオコンクールがあります。日本映画製作者連盟が行う「城戸賞」は、劇場用映画の脚本を対象にしたコンクールです。
映画の脚本家になる道筋は、映画の脚本家になるにはで詳しく紹介しています。応募先の選び方はシナリオコンクールの選び方が参考になります。

よくある質問
映画の脚本家とドラマの脚本家は別の人ですか?
映画だけを書く人もいれば、ドラマやアニメと両方書く人もいます。ただ、尺や見せ場の置き方が違うので、書き分ける力が求められます。
映画脚本は何枚くらい書けばいいですか?
長さは作品やコンクールの規定によって変わります。城戸賞の第52回では、A4横・20字×40行の縦書きで50枚以上60枚以内とされていました。応募前に最新の募集要項を確認してください。
脚本家は映画の撮影現場に行くのですか?
作品によって違います。撮影中に細かな直しが必要になり、現場とやり取りすることもあります。撮影は監督に任せる形が多いです。
映画の脚本家になるのに資格は必要ですか?
脚本家になるための必須の資格はありません。書いた脚本そのものが実力を示す材料になります。
まとめ
- 映画の脚本家は、2時間前後の物語を1本の設計図にまとめる仕事
- ドラマとは尺・場面数・セリフ量・見せ場の置き方が違う
- 気持ちは画で見せ、ト書きには見えるものを書く
- 監督・プロデューサーと話し合い、直しを重ねて決定稿にする
- 最初は30分程度の短編を1本書き上げ、人に読んでもらう





コメント