時代劇の脚本家|時代劇ならではの書き方と下調べ

時代劇の脚本家の書き方と下調べを紹介する記事のアイキャッチ

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時代劇を見ていて、『こういう脚本はどうやって書いているんだろう』と気になったことはありませんか。

結論から言うと、時代劇の脚本家は、物語を考える前に「その時代の暮らし」を調べることにかなりの時間を使います。ただ、全部を正確に再現するより、今の視聴者に伝わる形に置き換える力のほうが大事なんです。

この記事を読むと、時代劇ならではの書き方と、下調べで確かめる項目が分かります。

目次

時代劇の脚本家は何が違う?

先に結論

時代劇脚本家の仕事の流れは、現代劇の脚本家と大きくは変わりません。違うのは、セリフ・小道具・人の動きのひとつひとつに「その時代ならどうか」という確認が入ることです。

脚本は、セリフと、場面や人物の動きを書くト書きでできています。時代劇でもこの基本は同じです。

ただ、現代劇なら「スマホを見て顔をしかめる」と書けば済む場面が、時代劇ではそうはいきません。知らせは手紙で来るのか、人づてか、と考えるところから始まります。

比べる点現代劇時代劇
セリフ今の話し言葉で書ける時代の雰囲気と聞きやすさの両方を考える
小道具身の回りの物をそのまま使えるその時代にある物かを確かめる
人の動き視聴者が自然に分かる身分や作法で動きが変わる
時間の流れ時計と日付で示せる時刻の呼び方や移動の時間を考える
下調べ職業や土地の取材が中心暮らし全体の資料にあたる

『難しそう…』と感じた方もいるかもしれません。でも、調べる項目を決めてから書けば、手が止まることはぐっと減ります。

脚本家という仕事の全体像は脚本家とは?仕事内容と役割で紹介しています。

脚本そのものの書式は、脚本の書き方の基本|柱・ト書き・セリフのルールで確認できます。

打ち合わせでよく話し合うこと

時代劇の脚本も、プロデューサーや監督との打ち合わせで方向を詰めながら書き進めます。現代劇に比べて、話し合う項目が少し増えるのが特徴です。

時代劇の打ち合わせで決めておきたいこと
  • どの時代のどの地域を舞台にするか
  • 史実に沿うのか、架空の人物で描くのか
  • セリフをどこまで時代の言葉に寄せるか
  • 撮影できる場所やセットに合わせて場面を組めるか

例えば、「町人の言葉はやわらかく、武家の言葉は少し硬めに」と最初に決めておくと、書き手が何人いても作品の空気がそろいます。こうした取り決めを先に共有できると、直しの回数も減らせるんです。

時代劇の書き方で気をつけたい3つのこと

ここが大事なところです

時代劇の脚本では「本物らしさ」と「伝わりやすさ」のつり合いを取るのがいちばんの腕の見せどころです。

1. セリフは「時代の香り」と「聞きやすさ」を両立する

時代の言葉を忠実に再現すると、今の視聴者には聞き取りにくくなることも。逆に今の言葉そのままだと、時代の空気が消えてしまいます。

例えば、こんな違いです。

「ちょっと待って、それ本当?」
「待たれよ。それはまことか」

後者のほうが時代劇らしく聞こえますよね。ただ、全員がこの話し方だと重たくなるので、身分や性格で言葉の硬さを変えるのがコツです。

2. ト書きで「時代の手ざわり」を見せる

時代の雰囲気は、セリフよりもト書きの小道具や動きで伝わりやすいんです。行灯の明かり、土間の匂い、雨戸を閉める音などを短く書き添えます。

ただし、ト書きに調べたことを全部書き込むのは逆効果です。「その場面で観る人に見せたい物」だけに絞りましょう。

3. 説明ゼリフに頼らない

時代背景を伝えたくて、人物に長い説明をさせてしまうのはよくある失敗です。

よくある失敗

「今は飢饉続きで、年貢も重く、村の者は皆困っておる」のように、状況をセリフで全部言わせてしまう書き方です。空の米びつをのぞく手元や、子どもに自分の分を分ける親の動きで見せたほうが、ずっと伝わります。

時代考証で確かめる項目チェックリスト

先に結論

下調べは「言葉づかい・暮らし・身分・時刻」の4つに分けると漏れが減ります。書き始める前に一度、書き終えたあとにもう一度確認するのがおすすめです。

時代考証とは、作品の中の言葉や物、習慣がその時代に合っているかを確かめることです。大きな作品では専門の担当者がつくこともありますが、まずは脚本家自身が下調べをしておくと打ち合わせがスムーズになります。

ここでは、脚本を書く前に確かめておきたい項目を一覧にしてみました。

分類確かめること調べ方の例
言葉づかい呼びかけ方、自分の呼び方、敬語の使い分け時代を扱った解説書、辞典
暮らし食べ物、明かり、住まい、着物、お金の単位生活史の本、博物館の展示
身分誰が誰に頭を下げるか、入れる場所と入れない場所制度や社会のしくみの解説書
時刻時刻の呼び方、夜の暗さ、移動にかかる日数暦や交通の解説書、当時の地図
時代劇の下調べで確かめる言葉づかい・暮らし・身分・時刻の4項目をまとめた図解
書き終えた脚本の見直しチェック
  • 人物の呼び方と自分の呼び方が、身分に合っているか
  • 今の言葉や外来語がセリフに混ざっていないか
  • 小道具がその時代にある物か
  • 夜の場面で、明かりの描き方に無理がないか
  • 移動の場面で、かかる時間に無理がないか
  • 位の違う人物同士の座り方や頭の下げ方が合っているか

調べすぎて書けなくなる時は

『調べても調べても、まだ足りない気がする…』という方も多いはずです。そんな時は、物語に出てくる場面だけを調べる、と決めてしまいましょう。

例えば、宿場町の旅籠が舞台なら、まずは旅籠の一日と、泊まる人の身分の違いを調べます。城の中の細かな作法は、城の場面を書くと決まってからで十分です。

補足

時代劇は、史実をもとにした作品と、架空の人物や出来事を描く作品に分かれます。架空の話でも、暮らしや身分の描き方がその時代らしいかどうかで、作品の信頼感が変わります。

時代劇の脚本家になりたい人の練習方法

先に結論

いきなり長編の時代劇を書くより、短い1場面を何本も書いて「時代の言葉で人を動かす」練習を重ねるのが近道です。

時代劇を書く力は、現代劇を書く力の上に積み上がります。まずは人物の気持ちが動く場面を書けることが土台です。

時代劇を書く練習の進め方
  1. 好きな時代を1つ決め、暮らしの本を1冊読む
  2. その時代の町の場面を、2〜3枚の短い脚本で書く
  3. 同じ場面を現代劇に置き換えて書き、違いを比べる
  4. 声に出して読み、言いにくいセリフを直す
  5. 10枚前後の短編に広げ、人に読んでもらう
時代劇の脚本を書く練習を、短い1場面から積み上げる手順で示した図解

例えば、「江戸の長屋で、隣同士の二人が井戸端で口げんかをする」場面から始めてみてください。言葉づかいと身分と暮らしの3つが、自然に練習できます。

書いてみるとこんな形になる

練習用に、架空の短い場面を書いてみました。柱・ト書き・セリフの形は現代劇と同じです。

練習用の架空の場面

○ 長屋の井戸端(朝)
桶を手にした女と、洗い物を抱えた男が鉢合わせる。
女「また朝寝坊かい。水汲みの順番、もう回っちまったよ」
男「すまねえ。夜なべで草鞋を編んでたもんでね」
女、黙って自分の桶の水を男の盥に分けてやる。

「すまねえ」「回っちまった」のような言い回しを少し混ぜるだけで、時代の空気が出ます。最後の1行は、説明しなくても二人の関係が伝わる動きにしてみました。

現代の場面を時代劇に置き換えてみる

もう一つおすすめなのが、現代劇でよくある場面を時代劇に置き換える練習です。何に置き換えるかを考えるだけで、下調べの項目が見えてきます。

現代劇の場面時代劇での置き換えの例調べること
スマホに届いた知らせを読む手紙を受け取る、使いの者が来る知らせの届け方と日数
夜の街を歩いて帰る提灯を手に暗い道を帰る夜の明かりと町のようす
職場で上司に謝る奉公先で主人に頭を下げる身分と頭の下げ方
待ち合わせに遅れる約束の刻限に遅れる時刻の呼び方

『こんなに調べることがあるの?』と驚くかもしれません。でも、1場面ずつなら調べる量はそれほど多くないんです。

コンクールに出す時の注意

コンクールによっては、時代劇が対象外のものもあります。例えば、創作テレビドラマ大賞の第50回の募集要項では、時代劇は対象外とされていました。

規定は回によって変わるので、応募する前に最新の募集要項を確認しておきましょう。時代劇を受け付けている公募を探すか、時代劇で鍛えた人物描写を現代劇の応募作に生かすのも一つの方法です。

ドラマの脚本の流れはドラマの脚本家の仕事、映画の場合は映画の脚本家の仕事で詳しく紹介しています。

よくある相談:時代劇の脚本について

知恵袋などで多く読まれている相談を、まとめて答えていきます。

先に結論

時代劇のセリフや設定は「時代そのまま」ではなく、今の視聴者に届くように手を入れて作られています。その手の入れ方こそが、時代劇脚本家の腕です。

相談1:時代劇の話し言葉は、昔の本当の言葉なの?

『時代劇の話し言葉って、今とあまり変わらない気がする。昔の人は本当にこう話していたの?』という相談です。

答えると、時代劇のセリフは、当時の言葉をそのまま再現したものではないことが多いです。そのままでは今の視聴者に聞き取りにくいので、雰囲気を残しつつ分かる言葉に整えて書かれています。

脚本家が考えているのは「正しさ」と「伝わりやすさ」の配分なんです。時代らしい言い回しを要所に置き、ほかは聞きやすくする書き方がよく使われます。

相談2:時代劇を書く時、参考になる本はある?

『江戸時代の政治や風習をまとめて知れる本はないか』という相談もよく読まれています。

1冊ですべてを網羅するより、目的別に何冊か持つのがおすすめです。暮らしの解説書、言葉の辞典、制度の解説書の3種類があると、たいていの場面に対応できます。

本の選び方は脚本家になるための本の選び方も参考にしてみてください。

相談3:シリーズの時代劇に、なぜ脚本家が何人もいるの?

『長く続いた時代劇のシリーズで、脚本家が何十人も名前を連ねているのはなぜ?』という相談です。

1話完結の連続ドラマは、話ごとに別の脚本家が担当することがあります。長く続くシリーズほど、多くの書き手が関わることになるんです。

何人もの脚本家が書いても作品がばらばらにならないのは、主人公の口ぐせや決まりごとを共有しているからです。書き手の側から見ると、決まった型の中で自分らしい1話を書く力が求められる、とも言えます。

時代劇を書いてみたい方は、こうしたシリーズものの1話を想定して、架空の主人公で短い話を作ってみるのもよい練習になりますよ。

相談答えのポイント
話し言葉は本物か雰囲気を残して今の人に分かる言葉に整えている
参考になる本暮らし・言葉・制度の3種類を目的別に持つ
脚本家が多い理由話ごとに別の書き手が担当することがある

時代劇を書く力を伸ばすには

ここが大事なところです

時代劇は下調べの量が多いぶん、書いた脚本を人に読んでもらい「伝わっているか」を確かめる機会がとても大切です。

時代劇は、小説の題材としても人気があります。小説と脚本で書き方がどう違うかは、小説家と脚本家の違いで紹介しています。

自分で調べて書いていると、『このセリフ、今の人に伝わるかな』と不安になることも。そんな時は、他人に読んでもらうのがいちばんの確かめ方です。

独学で行き詰まったら、プロの添削を受けられる講座を比べてみると次の一歩が見えやすくなります。

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よくある質問

時代劇脚本家になるには、歴史に詳しくないとだめですか?

最初から詳しい必要はありません。書く場面に必要なことを、その都度調べる習慣があれば大丈夫です。人物の気持ちを動かす力のほうが土台になります。

時代劇の脚本は、現代劇と書式が違いますか?

柱・ト書き・セリフという基本の書式は同じです。違うのは、言葉づかいや小道具、人の動きを時代に合わせて確かめる点です。

時代劇を書く時、史実と違うことを書いてもいいのですか?

架空の人物や出来事を描く時代劇も多くあります。ただ、暮らしや身分の描き方が時代に合っていないと作品の信頼感が下がるので、物語の嘘と背景の嘘は分けて考えるのがおすすめです。

時代劇でコンクールに応募できますか?

時代劇を対象外としているコンクールもあります。応募する前に、最新の募集要項で対象を確認しておきましょう。

まとめ

この記事の要点
  • 時代劇の脚本家は、書く前の下調べにかなりの時間を使う
  • セリフは時代の香りと聞きやすさの両方を考えて書く
  • 下調べは言葉づかい・暮らし・身分・時刻の4つに分けると漏れが減る
  • 練習は短い1場面から始め、現代劇と書き比べると力がつく
  • 時代劇を対象外とするコンクールもあるので募集要項を確認する
脚本家ガイド

脚本家ガイド 編集部

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